2011年10月15日土曜日

超円高に挑む—野口悠紀雄さん。

▲野口さんって確かに賢いなぁ。

 でも…と筆者は思う。

 野口さんって、自分の賢さ・自分の論理の明晰さに「酔っている」ように感ずる。

 例えとしていいのかどうか分からないが、アメリカのノーベル賞(経済学)をもらったクルーグマン教授と同じような匂いがする。

 論理として確かにその通りなのだが、論理の詰めが鋭すぎて、最後の部分で現実から遊離してしまう…そんな感じがするのだがいかかだろうか。

 以下、新聞から抜粋。

「いま必要なことは成長モデルを転換すること。過去の成功モデルを壊さないといけない」─。

早稲田大学ファイナンス大学院 総合研究所の野口悠紀雄顧問は現在の超円高を日本が製造業に 偏重した従来の産業構造を抜本的に改造する好機ととらえる。

 新たな「基幹ビジネス」として、金融やIT、医療・介護など 付加価値の高いサービス産業の育成だ。

 ロイターでは、超円高に挑む企業経営者に対しインタビューを実施、海外生産の拡充や資金調達の多様化などが課題として 浮かび上がった。

 対し、野口氏はエネルギーの輸入価格低減や優秀な人材の 確保など円高の利点を強調。

 現在の円高を「企業経営への脅威」と受け止めるべきか。同氏の意見を聞いた。

■現在は「円安」  

 現在の円相場について野口氏は、物価変動や複数通貨の貿易量を考慮して算出する 「実質実効為替レート指数」でみれば「1995年頃と比べ今は非常に円安だ」 と断定。

 日銀が公表している同指数は、1995年頃が 「150」程度で、現在は「105」程度。

 同氏は「趨勢として年率2―3%の円高が続く」と予想。

 ドル/円の実効為替レートを決める物価上昇率をみると、95年4月から今年4月までの米国CPI)上昇率は39.2%。同期間の日本の上昇率は マイナス3.6%。

 米国で95年に100で買えた物が2011年に139出さないと買えなくなり、日本では100だったものが96で買えるようになった。

 円に対するドルの「減価」を加味すると「95年当時のドル80円は56円 に相当するので、今はそれほどの円高ではないということになる」という。 

 野口教授は「企業経営者が超円高だと言っているのは、この期間に日本企業の生産性が著しく落ちたと言うことだ」と、 「震災後、円高が重要な役割を果たしている。

火力発電シフトによって LNGの輸入が増えているが、円高でメリットが数千億円から1兆円近く出る」と強調。 

■それでも海外移転は加速へ  

 企業経営者は現実に向き合う必要がある。

長期化する 円高相場を受けて、企業の海外移転が加速する。

 経営者の多くは、「対ドル70円を超える円高となれば海外生産を拡大する必要がある」「為替は高くなるか 安くなるかわからない。地産地消しかない」「当然の動きで、部品メーカはついて行かざるを得ない」と。

 海外生産移転は今に始まったことではない。

 ニコンは、カメラの海外生産を 進めてきた。

 デジカメの海外生産比率を90%以上に高めて、ドル/円の為替変動の影響をほぼゼロに抑えたことで「ドルのリスクはほぼフリー」を実現。

 ソニーは海外生産比率が今期75%に達し、ドル1円の変動の年間営業利益への影響額を20億円まで縮小した。

 東芝も対ドルの場合、年間営業利益への影響額を ゼロに押さえ込んでいる。

 ただ、自動車産業からは、「今の為替水準で 利益を出していくのは至難の業だ」、「業務戦略を見直す必要が出てくるかもしない」といった危機感の声が聞かれる。

 野口氏は「円高が問題なのは もう自動車産業だけだ。ただ、いずれあまり影響されなくなる」と。 

■国内雇用だけが問題  

 しかし、個々の企業が海外シフトの拡大といった行動を加速するほど、日本国内で 働く場が失われるという「二律背反」を招く。

 野口教授は製造業の海外移転について 「国内の雇用だけが問題になる。

 ただし、製造業が残ったとしても雇用問題が解決される わけではない。日本の製造業の雇用は著しい勢いで減少している」と話す。 

 2000年に1007万人だった製造業労働者は10年に827万人に減少。

 製造業の雇用の受け皿としての存在感低下が浮き彫りになる。

 野口氏が問題視するのは、「小売業と飲食業という生産性の低い部門が雇用の受け皿に なっていることだ。生産性が低いから日本の所得が落ちる」と。

 では今後はどのような雇用機会を創出するべきか。

 野口氏は、1)間接金融ではない投資 銀行的な金融サービス、2)企業向けのコンサルティングやIT・クラウドサービス、 3)医療・介護サービス―を挙げた。

 同氏は「投資銀行的な仕事を国内ではなくアジアで 行うべきだ。野村証券が辛うじてそれに近い。  

 医療・介護は圧倒的な需要超過だ。

  

 原子力発電所や高速鉄道など、政府が昨年の 「新成長戦略」で掲げた「インフラ輸出」については、「一つのビジネスモデルであり、 推進していくべきだと思う」と話す。

一方で、野口氏が「自殺行為」とみるのが、 「新興国向けの低価格帯の家電や自動車だ。

「新興国の 中間所得層は、日本でいえば年間所得150万円以下の人たちだ。低価格製品で高い利益 を上げられるはずがない」と。 

 高付加価値の産業を育成するには優秀な人材の確保が欠かせないが、円高はその好機。

 パナソニックが、2012年度の国内新卒採用を前年比約3割減らす一方、海外採用を 強化するなど、有力企業の間で採用政策を変える動きも出てきた。

 野口氏は「日本企業にとっては日本の若い人を雇用するよりは、中国の卒業生を雇用したほうが能力は高いし、多分安い賃金で雇える」と指摘。

 同氏は 「教育に責任がある。特に大学、高等教育。我々の責任だ」と。

▲補足、感想など

 なんというかなぁ。

 頭でっかちだなぁ、と感ずる。

 特に、--1)間接金融ではない投資銀行的な金融サービス、2)企業向けのコンサルティングやIT・クラウドサービス、 3)医療・介護サービスが次の日本でも成長産業だという説明の部分だ。

 また、「日本企業にとっては日本の若い人を雇用するよりは、中国の卒業生を雇用したほうが能力は高いし、多分安い賃金で雇える」と指摘。--って。

 こんな説明どこかで聞いたことがあるような気がする。

 1990年代、アメリカが日本から自動車とかテレビなどの輸出によって、製造業が壊滅状態になった時、アメリカがこれから傾注する分野というものがこんな感じだったような気がする。

 アメリカは、1990年代-2000年代半ばまで、その方向で産業を進め、結果としてサブプライムローンの破綻という形で終わったのではないのか。

 また、日本人学生より中国人学生を…てか。

 今年の春の大震災の時、なにもかもほっぽって逃げ出した人間をそもそも当てにできるのか。

 企業として優秀というだけでは駄目なのだ。追い詰められても追い詰められて追い詰められても逃げ出さない人間でなければ、ことは成就しない。

(例えれば、昨年のはやぶさの計画などを見よ。あれだけのしっこさ・執念深さがなければ、あの計画はうまくはいかなかった。製造を担当したnec がどれほど誇らしげに新聞で担当者の顔写真までいれて宣伝していたことか)

 その意味で中国人は失格だ。

 話がどこかへいった。

 記事の内容を少しまとめてみよう。

 野口さんのいう方向で、まぁ、日本の産業は進展していくだろうなぁ、とは思う。

 しかし、日本はアメリカとは違う。アメリカが通ってきた道を日本が踏襲するとは思えない。例えば、アニメの興隆など、1990年代に誰が予測できたか。

 日本は、誰にも予測できない形で、この円高に対応していくものだろう。