2011年7月4日月曜日

グレゴリークラーク氏の日本人論を読んでの感想

▲国際教養大学副学長グレゴリークラークという人がいる。

元々はイギリス人で、確か、英国の中国大使館に勤務し、後、オーストラリアに帰化した人ではなかったか。

 たしかに優秀で博識な人なのだが、元英国人のなんともしれない上から黄色人種を見下ろすという感じでものをいう癖の抜けない人である。

 1940年頃の生まれだから、まぁ、致し方ないか。(若い頃はもう少し、遠慮してしゃべっていたのだが、この年令になると白人優位を隠そうともしなくなった)

 筆者からすると、なにか言わずにはおれない言動が多い。

 そんな訳で記事の内容にふれて一言。

 以下、中国の新聞から抜粋。

 中国では近ごろ、日本についての研究が足りないと取りざたされている。

これは、中国と日本が同じ儒学文化圏にあり、一緒くたにされがち。

蚊帳の外にいる人間のほうが、良く見えているもの。

 グレゴリー・クラーク氏もまた、日本を蚊帳の外から見ていた人である。

71歳のオーストラリアの学者は現在、日本国際教養大学の副学長を務めている。

一人の西洋人として独自の見解を持っている。

日本は島国で、集落文化を中心に発展してきたため、価値観は本能的であり、感情的で現実的であると。

 一方、中国は大陸文化で、長い間、周りとの衝突や接触を繰り返してきているため、価値観はより理性的だ。

これらの観点に基づいて、グレゴリー・クラーク氏は日本人の特徴を13の項目にまとめた。

1.過度な「群れ意識」を持ち、命令に従う習慣がある。

日本人の行動は組織立っていて秩序的であり、その良いところは、皆が従順で統制が取りやすいところであるが、一旦、性質の悪い勢力が権力を握ると、全国民がそれに従ってしまう。

典型的な例が第二次世界大戦のときの外国への侵略である。

2.個人間の関係は誠実なものである。

これについては、印象深い体験した。

大阪付近の小さな村の駅に無人の野菜売り場があった。

袋に入った野菜が置かれ、板切れには、1袋100円と書かれていた。誰も店番をしている人はいない、買う人の良心に委ねられる。

3.日本人は完ぺき主義者であり、極端なほど秩序にこだわる。

世界の観光名所で、旗を持ったガイドの後ろで列を作って黙々と付いていく一塊の人がいたら、それは日本人である。

典型的な例は、トイレの清潔さをどこまでも追い求めるところにある。

日本のホテルのトイレのきれいさは有無を言わさず完璧である。

良いホテルになると、自動水洗トイレが付いている。

 そのほか、グレゴリー・クラーク氏は、

「4.手作りが好きである」

「5.チームワーク意識が強く、家族企業の管理に長けている」

「6.外国のものには、開放的で、広く受け入れるのに対し、外国人に対しては排他的である」と。

3~6の特徴は、日本の工業化が急激に進んだ要因である。

 これらの特徴に対して、中国人は日本人の逆であると言うこと。

 中国人は『知らないふりをしたほうがいいときには、そうしなさい。

 時には一歩引くことも大事である』との考えや、『その時々に応じて、どちらにも偏りがない考え方をしなさい』との考えを大切にしている。

 抽象的な信念について論じることが好きで、具体的な行動には移さない。

 外から来た思想に対しては排他的で、外国人は寛容に受け入れる。

7.イデオロギーが軽薄で頼りない。

 これは日本の政治の世界で見受けられる。

 対立しているように見える自民党と民主党ではあるが、政治理念はほぼ同じだ。

8.感情的で好戦的である。

 中国への侵略、どこまでも自制心が効かず、戦争を拡大させ、南京大虐殺という悲劇をも生んだことがいい証拠である。

9.外交・経済政策において、戦略性に欠ける。

 日本の外交は定まった理念がなく、典型的な日和見主義であると。

 また、短絡的で、日本経済の10年にも及ぶ停滞を招いた主な原因もそこにある。

10.合理性に欠ける。

 日本には整った義務教育のシステムがあるにもかかわらず、大学教育となるとありきたりである。日本に合理主義というものは存在しない。

 周りの影響を受けずに、真に独立した考えができる知識人がいない。

11.政府の力が弱く、派閥争いが目立つ。

 日本は地方自治だけで十分賄えると。

12.道徳観念は根本的に恥を重視し、罪悪感は重視されない。

 日本人は礼儀正しく、よく笑い、規律を守り、人に対して誠実であるにもかかわらず、過去の罪に対しては、目をそむけ真剣に向き合わない。

 その理由はこの道徳観にある。

13.日本人は法律が嫌いである。

 これに関しては、不思議がる人もいるだろう。

 なぜなら日本はアジアの中だけで考えても、法治国家に属する。

 グレゴリー・クラーク氏は、日本人は西洋人と比べて内々に事を解決することを好み、止む終えない場合だけ裁判を起こすのだと主張。

補足、感想など

まぁ、突っ込みどころの多い文章だ。

ただなぁ、問題はこのソースが中国の新聞だということだ。

グレゴリー・クラーク氏が言ったことになっているが、さぁ、どこまで本当のことか。

中国に都合の悪い部分は改変しているのだろう。--中国人のやりそうなことだ

まぁ、いいか。

こういう新聞に寄稿するのだから、グラーク氏も中国人の気性を充分に知ってそんなこともありうると考えてのことであろう。

なお、グラーク氏は冒頭でふれたように中国大使館に勤務された経験があり、中国語も堪能であったと記憶する。また、彼は中国人には親和性が高いようだ。

さて、本筋に戻って。

他のソースで、グレゴリー・クラーク氏は、日本人というものを考える時、忘れてならないのは「日本人というものは、一度も異民族に征服された経験のない民族」だということを強調されていた。

つまり、中国人(及び英国人を含め多くの国民)と日本人の違いの根底というか、核心はこれなのだ…と。

この視点からみると、クラーク氏の挙げた13の特徴の意味がよく見える。

1. 過度な「群れ意識」を持ち、命令に従う習慣がある。

 →日本列島に縄文人といわれる人が存在していた時、全体で三十万人程度の世界だ。紀元前1千年前くらいから稲作と同時に弥生人という人達が中国本土から少しづつ渡ってきて、また、食料を確保することが容易となり、人口が増え始めた。いってみれば、全体が親戚なようなものだからだろう。

2. 個人間の関係は誠実なものである。

 →この閉ざされた空間で数十万の世界から一緒に暮らしていたのだ。

3. 日本人は完ぺき主義者であり、極端なほど秩序にこだわる。

 →これは、稲作というものを続けてきた習慣だろうなぁ。水田は、連作ができる。もう3千年以上も毎年、同じことを続けてきたのだ。

 稲作は、同じ時期に同じ作業をする。水の管理など大変だった。水の配分とか、管理とかは指導する人がいなければ紛争が発生するもとだった。

4.手作りが好きである

5.チームワーク意識が強く、家族企業の管理に長けている

6.外国のものには、開放的で、広く受け入れるのに対し、外国人に対しては排他的である

 →4.5は、農耕民族であるからであろう。

 →6 はどうだろう。大航海時代の始め頃はそうでもなかったと思える。

 やはり、キリスト教というものをイエスズ会という過激な集団が布教したこと、また、ポルトガル人等が日本人を奴隷として東南アジア、南米などへ売り払ったことを嫌悪したものだろう。

7.イデオロギーが軽薄で頼りない。

 →これこそ、日本人が異民族から征服されたことがないためであろう。言わば、親戚付合いのため、誰かを傷つけることを恐れ、対立が弱い。なぁなぁでなんとかことを収めてしまおうと考えるのだ。

8.感情的で好戦的である。

 →岡本太郎だったかなぁ。戦前、フランスから日本に帰ってきたとき、日本人は女性的だと発言したという。

 異民族との戦争の回数が少なく、(白村江とか、元寇とか朝鮮出兵とか経験がない訳ではない)、どこか日本人が負け慣れしていないために、ヒステリックなのだそうだ。

 感情的なことは以上の説明で言い得ているであろう。

 好戦的かどうか、それは自国の名誉が傷つけられれば、どんな弱小民族でも立ち上がる。好戦的というのは、クラーク氏の白人的な偏見であろう。

9.外交・経済政策において、戦略性に欠ける。

 →これはなぁ、日本は大航海時代の中頃17世紀の始めに、海外との交渉を止めてしまう。閉鎖された空間の中で、循環型の社会をつくっていたのだから、外交も経済政策もあったとしても、そう重要ではなかっだ。

 明治維新後150年を経過したくらいでは、元イギリス人からそう指摘されても、そうですか、そうでしょうね・としか日本人としてはいいようがあるまい。

10.合理性に欠ける。

 →これは、その通りだろう。

  日本は、戦国時代末期から、江戸時代にかけて、西欧式の大学というものを生み出すことができなかった。なぜなのだろう。

 鎖国政策というものは、確かに異民族との交渉(オランダ、中国とはあったのだが)を断ち切った中で200年以上を経過したためだろうなぁ。そのことは、やはり、刺激が乏しいのだろう。産業革命にも遅れたし、大学のような研究システムも生み出せなかった。

11.政府の力が弱く、派閥争いが目立つ。

 →政府の力が弱いのではあるまい。いわば、議会制民主主義というものを日本的に利用していると解釈すべきだ。

 ヨーロッパ系の人達には、生ぬるい制度と見えるのだろうが、これはいい、悪いの話ではない。日本式利用方法ということでしかない。

12.道徳観念は根本的に恥を重視し、罪悪感は重視されない。

 →これを本当にグレゴリークラーク氏が言ったのかなぁ。中国人が勝手にいれたのではあるまいか。

 まぁ、いいさ。

 恥を重視し・・・というのはなにかなぁ。武士は名誉を重んじたから、そのあたりと関係するのだろうなぁ。

 罪悪感は重視されない・てなんだろう。日本が戦争に突入したことか。

 上でも書いたが、国の名誉が傷つけられれば、どんな国でもたちあがるさ。

 罪悪感って、中国人にいわれたくはない。

 1960-1970年にかけての文化大革命で教養人等を4500万人も殺害し、畑の肥やしやら、自分たちで食べたではないか。

 そういえば、日下公人さんが、アメリカ・ニューヨークに中国人の人肉食の博物館をつくろう・とか提言されていたが、中国人の言う南京大虐殺と対抗していい案ではあるまいか。

13.日本人は法律が嫌いである。

 →これは冒頭の異民族に征服されたことがない、また、異民族と関わった期間が短いためだ。言わば、法律というものを欧米諸国のように利用することができないためだ。

 まぁ、日本的に法律を使っているという言い方の法が正しいのだろうなぁ。

 以上、グレゴリー・クラーク氏が日本人の特徴としてあげた条項について、筆者なりに考察してみた。

 そこにあるのは、日本という国の成り立ちの影響であり、農耕民族であることの影響であり、17世紀初めに鎖国政策を採用したことの影響が色濃く残っていることなのだ。

 結局、日本人は日本人であるということでしかない。この日本列島という風土により育まれ、そこでの2千年に及ぶ歴史の結果が元英国人から指摘されるような特徴となっているのだ。

 また、欧米諸国から取り入れた制度も、日本的に利用しているということだ。どちらが良くて、どちらが悪いという話ではない

 最後の最後だが、グレゴリークラーク氏の指摘にせよ、中国人の指摘にせよ、日本人との差異を指摘できるということは、中国人、英国人などが、異民族から征服された(混乱し、価値観等が逆転する)経験を有し、また、牧畜を主とする民族であり、そして、大航海時代において、異民族を奴隷として売買した経験を有する民族であったことを如実に示している。

 他者を論じることは、実は自分をあからさまに語ることでもあるのだ。

 注意せねばなるまい。